【行政書士試験】私人間効力とは?判例をやさしく整理|三菱樹脂事件・昭和女子大事件・日産自動車事件

憲法の勉強をしていると、最初につまずきやすい論点のひとつが私人間効力です。
言葉が少しかたいので難しく見えますが、やっていること自体はそこまで複雑ではありません。

要するに、
「憲法の人権は、会社と社員、私立大学と学生のような私人どうしの関係でも、そのまま使えるのか」
という話です。

この論点は、行政書士試験でも判例ベースで問われやすいところです。
そこで今回は、私人間効力の基本から、代表判例である三菱樹脂事件・昭和女子大事件・日産自動車事件まで、できるだけわかりやすく整理していきます。


私人間効力とは?

憲法の人権規定は、もともと国と個人の関係を想定しています。
つまり、国が個人の自由を不当に侵害しないように縛るためのルールです。

では、私人どうし、たとえば

  • 会社と労働者
  • 私立大学と学生
  • 団体とその構成員

のような関係でも、憲法上の人権をそのまま主張できるのでしょうか。

この問題を考えるのが、私人間効力です。

ここでポイントなのは、判例は基本的に
「憲法を私人間にそのまま直接ぶつける」
という考え方は取っていないことです。


まずは学説をざっくり整理

私人間効力には、ざっくり3つの考え方があります。

1 無適用説

憲法の人権規定は、基本的に私人間には及ばないとする考え方です。

2 直接適用説

私人間でも、憲法の人権規定をそのまま直接適用できるとする考え方です。

3 間接適用説

私人間に憲法をそのまま使うのではなく、民法90条の公序良俗709条の不法行為などを通じて、憲法の価値を反映させる考え方です。

そして、判例・通説として押さえるべきなのは、基本的にこの間接適用説です。

試験対策としては、難しく考えずに
「私人間では、憲法を直で当てるのではなく、民法を通して処理する」
と覚えておけば十分です。


三菱樹脂事件

私人間効力を学ぶなら、まず外せないのが三菱樹脂事件です。

どんな事件か

企業が採用した労働者について、学生運動歴を申告しなかったことなどを理由に本採用を拒否した事件です。

ここで問題になったのは、思想・信条に関する自由や平等の保障が、会社と個人の関係でもそのまま使えるのか、という点でした。

判例のポイント

最高裁は、憲法14条や19条などの人権規定は、本来、国や公共団体と個人との関係を規律するものであって、私人相互の関係を直接規律するものではないとしました。

つまり、
「会社と個人の間で、憲法をそのまま直接使うわけではない」
ということです。

ただしそれで終わりではありません。
私人間でも問題があれば、民法90条や不法行為法など、私法上のルールを通じて調整する余地があると考えられています。

ここでの受験ポイント

この判例で大事なのは、細かい事案よりもまず
判例は私人間で憲法を直接適用しない
という基本線です。

私人間効力の論点は、まずこの三菱樹脂事件を軸に押さえるのが王道です。


昭和女子大事件

次に押さえておきたいのが昭和女子大事件です。

どんな事件か

私立大学の学生が、大学の学則違反などを理由に退学処分を受け、その効力を争った事件です。

一見すると、学校側の処分だから公権力っぽく見えます。
ですが、相手は国公立大学ではなく私立大学です。
ここが重要です。

判例のポイント

最高裁は、思想・表現・学問の自由などの人権保障規定は、国や公共団体の行為に対して個人の自由を守るためのものであり、私人相互間に当然に適用されたり、類推適用されたりするものではないとしました。

つまりここでも、
「私立大学と学生の関係に、憲法をそのまま直接ぶつけるわけではない」
という判断です。

ここでの受験ポイント

昭和女子大事件で問われやすいのは、
私立大学の学則や処分に対して、憲法上の自由権を直接主張できるわけではない
という点です。

三菱樹脂事件の考え方が、労働関係だけでなく、学校と学生の関係にも及んでいると見れば理解しやすいです。


日産自動車事件

私人間効力を勉強していると、次に出てくるのが日産自動車事件です。

どんな事件か

就業規則で、男性と女性とで定年年齢に差を設けていたことが争われた事件です。

判例のポイント

最高裁は、女性の定年年齢を男性より低くしていた部分について、性別のみによる不合理な差別として、民法90条により無効としました。

ここがとても大事です。

受験生がやりがちなのは、
「平等原則の話だから、憲法14条が私人間に直接適用されたんだな」
と考えてしまうことです。

ですが、そうではありません。
この事件でも、あくまで
民法90条を通して無効にしている
のです。

ここでの受験ポイント

日産自動車事件は、私人間効力の論点において
憲法の価値を民法90条に反映させる典型例
として押さえると強いです。

三菱樹脂事件が「直接適用しない」という入口なら、日産自動車事件は「では実際にどう救済するのか」という出口の判例です。


試験ではどう整理すればいいか

私人間効力は、学説を細かく比べて迷うより、まず判例の型を押さえたほうが早いです。

整理すると、こうなります。

判例の基本姿勢

私人間に憲法上の人権規定をそのまま直接適用するのではなく、民法90条や709条などの私法の一般条項を通じて調整する

三菱樹脂事件

私人間で憲法を直接適用しない、という基本線を示した判例。

昭和女子大事件

私立大学と学生の関係でも、憲法の自由権を当然に直接適用するわけではないとした判例。

日産自動車事件

平等原則の趣旨を踏まえつつ、民法90条を使って不合理な差別を無効にした判例。


暗記のコツ

この論点は、次のように覚えるとかなり整理しやすいです。

私人間効力=憲法を直で当てない。民法を通す。

さらに判例は、

三菱樹脂で基本線、昭和女子大で応用、日産自動車で民法90条による救済

この流れで押さえると崩れにくいです。


まとめ

私人間効力は、最初は難しく見えます。
ですが、判例の流れは意外と素直です。

  • 憲法は本来、国と個人の関係を規律する
  • 私人間では憲法をそのまま直接適用しない
  • その代わり、民法90条や709条などを通して憲法の価値を反映させる

この軸を持っておけば、三菱樹脂事件も昭和女子大事件も日産自動車事件も、バラバラではなく一つの流れとして理解できます。

行政書士試験では、こうした判例論点は、知っていれば確実に取りたいところです。
言葉だけ追うのではなく、**「どの条文を通して処理したのか」**まで意識して押さえておくと、本試験でかなり強くなります。

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